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ローコード開発への誤解をなくし、今度こそ正しい活用を

コミュニティ設立から9年が経ち、ようやくノーコード・ローコード開発が「怪しげなツール」から「これまでの課題を解決してくれそうな何か」という認識に変わりつつあることを、
コミュニティ創設メンバーの一員として喜んでいます。
しかし一方で、過度な期待や、誤った認識のもとに語られる場面も目立ってきました。
単なる一過性のブームではなく、今後何年にも渡って使われる製品となるために、なぜこのようなツールが必要なのかという原点に立ち返ってみましょう。

出発点は、基幹システムに代表される、業務アプリケーションの在り方が変わってきたことです。
これまでのように「同じ業務アプリを何年も使い続ける」ことでは企業は市場の変化に対応できません。
しかし新しいビジネスモデルの実践は、これを支える業務アプリの存在が不可欠です。
さらに、その新しいビジネスモデルは、実験的 - どうなるかわからないが、やってみる、という性質を備えています。
そのため、これまでよりも迅速な開発手法が求められています。
ところが従来の開発手法は「一度決めた仕様を変更しにくい」「機能追加や修正が、どこに影響を及ぼすか、わからない」「開発やテストに多くの開発要員が必要で、人を集めるだけも一苦労」
「開発者の進捗管理だけでも大仕事」といった課題を抱えていました。
少なくない投資をしたにもかかわらず、リリース後はユーザ部門から「使いにくい」などのクレームが入り、関係者が報われないという悩みもありました。

論点を整理しましょう。私たちが求めていることを次の3点にまとめました。

 (1)仕様が未確定でもとりあえず動くアプリをつくり、ユーザ部門を巻き込みながら改善していけること
 (2)機能追加や修正に際し、アプリの規模によらず、この修正がどこに影響するかを迅速に把握できること
 (3)少人数で大規模システムを開発・保守できること

ローコード開発ツールは、まさにこの問題を解決するために登場した製品です。
別の言い方をすると「プログラムが書けない人でも業務アプリを開発できる」ことを目的としたツールではない、ということです。
ではローコード開発ツールの使い方を学べば、問題を解決できるでしょうか。
そんなことはなさそう…ですよね。では具体的にあと、何が必要でしょうか。

実は上の3点をまとめて解決するコアとなる技術があります。
「(1)とりあえず動くプログラム」の核であり、かつ、この出来・不出来が「(2)影響分析」や「(3)少人数開発」の成否に直結します。
このコア技術はどのローコード開発ツールからも独立しており、上流設計のキモになります。
私はそれが「データベース設計」だと理解しています。
実際、多くのローコード開発ツールはプロジェクト開発の起点がデータベース設計となっています。

ところがローコード開発ツールは与えられたデータベース設計の良し悪しを判断できません。
そのデータベース設計を起点として、アプリケーションを組み上げていきます。
不適切なデータベース設計であっても、ツールの力で一見、立派なアプリケーションを作れたように錯覚してしまいます。
もちろん、それでは元の課題を解決できないことはいうまでもありません。

まとめます。
ローコード開発ツールは魔法のツールではありません。
しかしこれまでの開発現場の苦労を解決する潜在力を秘めていることは間違いありません。
その能力を十分に発揮するために、(ローコード開発ツールへ入力する)設計情報、特に、データベース設計が決め手になります。
良いデータベース設計と、使いやすいローコード開発ツールは、あたかも「プログラムが書けない人でも、業務アプリを開発できる」ように思わせることでしょう。
しかしそれはあくまでも副産物でしかありません。
ローコード開発ツールの誤解の多くは、上の前提をすっとばして「操作が簡単か」「自分好みのUIがつくれるか」という視点だけで語られていることに起因しているようにみえます。
ローコード開発ツールは、細かい作り込みをするためのツールではありません。
設計情報と、動作するアプリケーションが完全に対応していることを保証するのがローコード開発ツールのメリットです。

設計情報が表現できる能力と、設計情報の引き継ぎのしやすさを学び、設計情報の能力にあわせて業務アプリを迅速に開発・保守・運用できること。
可能な限り社内のメンバーを中心に開発チームを構成すること。
そのような視点で選定すると、間違わないかと思います。

是非ともローコード開発ツールを正しく理解し、みなさんの開発の一助として役立てることを願っています。
ローコード開発コミュニティがそのような知識を共有できる場になれるよう、幹事として心がけたいと考えています。


2022年8月8日 ローコード開発コミュニティ幹事 贄良則(株式会社ジャスミンソフト)

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