ローコード開発コミュニティ設立から、日本のビジネスを支えるローコードへ
2013年8月、超高速開発コミュニティ(現、ローコード開発コミュニティ)が立ち上がった。ローコード開発ツールを持つ競合企業13社による設立でした。
巷からは、ライバル企業で設立した団体は絶対うまく運営できないという話が聞こえ、ITベンダーの経営を圧迫するような活動は止めろ!とツイッターが炎上したとも聞いた。
ちょっと不安がよぎったので、コミュニティの設立会見を開く1週間前に、設立メンバー企業13社の経営や事業トップにお集まりいただき、コミュニティの理念と運営について意見交換した。
その時に多くの方が言ったことを憶えています。
「同じ志を持つ人がこんなにいたのか!」
コミュニティの理念である「企業のスピード経営の実現」「魅力あふれるIT業界への変革」に共感いただき、コミュニティの活動が始まりました。
改めて、コミュニティ設立趣意書を読み返してみました。
「この50年余、人類社会はかつてないほどのスピードで進化して来ている。特にハードウェアの性能向上は目覚ましく(中略)・・・
しかし、ソフトウェア開発については・・・本質的に属人的かつ労働集約的な開発方法である点では今までほとんど変わっていない。
パッケージソフトの活用や低賃金労働力活用によるオフショア開発などが試みられてきたが、その根本的解決には至っていない。・・・
これらの困難な問題を解決し、スピード経営実現の為に、より安価且つ短期間でのシステム構築、環境変化に柔軟に対応出来るシステム運用を実現したいと考えているユーザー、
SIer及びITベンダーが結集し、ツールやメソドロジーの更なる発展や活用促進を図ることを目的として設立するものである。
このコミュニティを通し、その理念を共有するすべての関係者と広範に連携することが、企業経営への貢献ひいては魅力あるIT業界への変革につながることを確信している。」
あれから9年、ローコード開発コミュニティが運営できてきたこと、ローコード開発の市場拡大に寄与できてきたことは、前会長関隆明氏のリーダーシップ、幹事各位の献身的活動、会員皆さんの積極的参加が大きかったと考えている。
この数年、海外の巨大IT企業もローコード開発ノーコード開発に参入し、日本国内でもローコード開発市場は活況である。
しかし、ローコードツールは誰でも簡単に業務システムをつくれる魔法ではない。ツールの特性やシステム開発ノウハウ、テクニカルスキルを学習し、ユーザー主体で要件定義などリードすることがあって、威力を発揮するものだ。
ローコード開発ツールを正しく利活用する情報発信や指導を行い、多くの企業のスピード経営を支援することに、ローコード開発コミュニティの存在意義がある。
これからもDX推進が叫ばれるなか、大企業だけではなく、地方の中小企業でもローコード開発はスピード経営を支えるものとして必須となってくるでしょう。
一つ事例をあげよう。
金属加工の中小企業集積で有名な新潟県燕市では、行政(燕市役所)が地場産業のDX化をリードしています。それを支えているのがローコード開発である。
燕市は金属加工が分業で行われ、金属製品の製造や全国への販売、海外への輸出が行われてきた。
各社のIT化は進んでいるものの、産業界の中で各社の取引は電話、FAX、打ち合わせを中心としたアナログ的情報伝達手段が多く、各社の受発注業務や進捗確認で多くの時間を要することや同じモノ(製品や部品)を人や会社によって呼び名を変えることがあり、誤りも多かった。
そこで、燕市の製造業をクラウドで結び、 受発注や納期確認、製造進捗などの業務を、ITを利用して情報共有することで、業務の無駄を省き、 各社の生産性アップ、事業継続を支援するためのサービスをつくり、アナログからデジタル化を進めて
・紙伝票の作成や管理時間の無駄を無くし、時間の短縮、再入力による入力ミス防止
・契約書(発注、受注、納品、請求等)の作成や管理時間の短縮
・FAX送受信作業時間や問合せ時間の廃止や短縮
・注文状況や生産進捗状況の問合せ時間の短縮
...を図っている。
このシステムを素早く立ち上げ、改善や機能追加を迅速に行えることができているのは、ローコード開発ならではの成果だ。
ビジネスのスピードを速く展開するために、表面には出てこないがローコード開発ツールが日本経済を支えるものとなっていくことはあきらかであり、さらにローコードツールも進化していくことでしょう。
9年前、コミュニティを設立した理念に向けて、一歩づつ前進しているでしょうか。
2022年7月29日 ローコード開発コミュニティ幹事 樋山証一