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ローコード推進におけるCoEの重要性

Center of Excellence(CoE)とは特定エリアのノウハウや人材を集約し、組織横断的な取り組みを行っていく中央組織のことである。
ここでは、システム開発を担当する組織の観点からCoEの重要性を探っていこう。
ローコード開発の導入目的は開発期間短縮、コスト低減、社内IT人材の活用など企業によって様々である。
導入規模が小さければ少数の開発チームやメンバーをコントロールするだけで良いため、ローコードの効率性を最大限に享受しやすいことは想像に容易い。
しかし、企業内でのローコード導入が進んでいくとどうであろうか。
開発規模が大きくなり、要件は複雑になり、開発チームの数が増大し、取り扱うローコードソリューションの種類が増え、関係者の数が増大していく。
このような状況が引き起こす課題とその対策を開発部門・ベンダー・ユーザ部門の3つの側面から見ていきたい。

まずは技術者を要する開発部門だが、ここで課題となるのは開発ガバナンス、技術知識の蓄積と共有、そして技術者の育成であろう。
ローコード開発はJavaなどのオブジェクト指向言語を基本としたスクラッチ開発と違い、製品ごとに異なったコンフィギュレーション知識が必要となる。
これらの製品固有の開発ナレッジをインターネットから得ようとしても、その情報量はJavaなどと比べるとはるかに少ない。
より大規模・複雑なシステムにもローコードを適用していくためには一人ひとりの技術者が共通のルールの元で開発し、
それぞれの開発経験を通じて獲得した技術知識を企業内で蓄積・共有し、内部で人材を育成していくことが重要になってくる。

次はローコードソリューションベンダーとのリレーションである。
複数の開発部門やチームがそれぞれの要件に応じて情報収集し、ベンダー交渉をしてしまうと類似のローコードソリューションを複数、別々の観点で導入してしまうということが起こりうる。
これではライセンスコスト交渉も効果的に行えないばかりか、固有製品に精通した技術者がバラバラと生まれてしまうため社内における技術者集団の形成を困難にしてしまう。
これを回避するためにはベンダー交渉の窓口を一本化し、各ソリューションの特性・機能カバレッジ・開発手法を包括的に理解し、
効率的な開発体制の構築を検討していく中央集権的な機能を検討すべきである。

最後はユーザ部門だ。
開発要件の出し手であり開発のスポンサーにもなるユーザ部門内でローコード開発の理解が深まっていない場合、
ローコード開発適性がある開発案件がコストの高いスクラッチ開発に流れてしまったり、ローコードを活用していてもカスタマイズ量が多くなってしまったり、
ユーザ部門の人材を活用した市民開発という形で新たなソリューションを独自に導入してしまう場合がある。
これらを回避するためには企業内における既存のローコード活用事例を正しく周知し、標準機能を活用したFit-to-Standardのコンセプトを適切に理解してもらい、
案件の内容が固まっていない超上流段階から導入コンサルティングをしていくといったことが必要になってくる。

ユーザ系情報システム子会社である我々MUITでは前述の課題に対する打ち手として各ローコードソリューションの高スキル者を集めてCoEチームを組成し、
開発知見集約・開発ガイド整備・技術トレンド収集・マルチソリューション人材育成・ベンダーコミュニケーション・研修運営・社内外啓蒙活動・ユーザコンサルティング・他開発部署へのローコード導入支援等を包括的に行っている。
ローコード開発の効率的なスケールアップを目指すことは結果的に導入企業の開発アジリティを高め、ビジネス価値実現を加速し、競争力を強化していくことにつながるため、
重要な企業戦略の一つとしてCoEを中心としたローコード導入推進の検討をお勧めしたい。


2023年4月11日 ローコード開発コミュニティ 新田哲也(三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 デジタルイノベーション本部 DX推進部)

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